IT職に就いてすぐ感じるのは、その「泥臭さ」だ。イメージでは全ての業務が効率的に行われているように思われがちだが、実際はそうでない場合も多い。
レビューと呼ばれる成果物の評価会議があるが、未だにソースコードや設計書をプリントアウトして行っている。レビューを行う能力のある人材が居なくて大した内容にならず、集まる必要がそもそも無かった、という事もある。
細かい業務であればまだ良いのだが、プロジェクト開始時の作業見積もりが間違えていて、まったく進行の見通しが立たず、追加で大量増員を行う、というのもよくある話だ。しかし、そのような急な場合に来るメンバーは大抵、経験の浅い人達になる。ベテランはどこの現場も手放さないからだ。つまり、教育の手間が増えるだけ無駄が多くなる。
また、クライアントの中には要件定義時に無かった機能を「仕様変更」の名の下に、次から次へと追加しようとするタイプがいる。そんな事をすれば進行している作業の修正や手戻りが発生するのは明かだ。一旦、現在の状態のシステムを完成させて、次のフェイズで取り込めば良い話なのだが、この手のユーザーは後を絶たない。スケジュールも遅れ、システム全体の品質も下がるので、誰も得をしない。
現場の人間はみな、クライアントの無理難題をかわしながら、進捗会議でのプレッシャーに耐えつつ、開発作業を続けている。こうして「非効率」な事に囲まれて、就職時のイメージとのギャップを感じるようになることも増えていく。そこから、IT職を「辞めたい」という考えに傾いてしまうのだ。